- データフロー図を作りたいけど、何から始めていいか分からない…
- 具体的な実例やツールの選び方が知りたい
- 業務設計の現場でDFDをどう使うのかイメージできない
- DFD記号や書き方のルールが複雑で理解しにくい
- 他の図と何が違うのかハッキリしてほしい

本記事では、データフロー図(DFD)の基本から書き方、実際の手順やよくある間違い、現場での活用事例、ツールの使い方までわかりやすく丁寧に解説します。初心者でも最初の一歩を踏み出せる内容となっていますので、DFDをしっかり理解してシステム設計や業務分析に役立てたい方におすすめです。
データフロー図(DFD)とは?わかりやすく解説
データフロー図とは、情報やデータの流れを視覚的に示す図です。システム開発や業務改善の現場で頻繁に使われる手法で、複雑なプロセスをシンプルな記号と矢印で表現します。具体的には外部エンティティ、プロセス、データストア、データフローの4要素で構成され、多くの現場で欠かせません。
業務やシステムがどのようにデータを処理しているのか知りたい場合、データフロー図を作成すると効果的です。例えばECサイトの注文処理システムであれば、顧客からの注文データがどのように処理され、在庫管理システムと連携するかが一目でわかります。こうした可視化によって、流れを理解するのに大いに役立ちます。
図で整理することで、複雑に見える仕組みも一目で全体像がつかめます。特にシステム間の連携やデータの受け渡しポイントが明確になるため、非技術者でも理解しやすいのが特徴です。この視覚化によって、問題点や改善点も見つけやすくなります。

始めて見るととっつきにくいですが、意外と理解しやすかったりしますよね。
データフロー図の特徴とメリット・デメリット
データフロー図には他の図にはない特徴があります。プロセスやデータの流れを視覚的に表現できるため、複雑な業務フローやシステム間の連携を構造化しやすく、フローも見やすいのが魅力です。特に外部システムとのデータ連携やバッチ処理の流れを把握する際に重宝します。
一方で、抽象的すぎて細部の動きが伝わりづらいこともあります。たとえば、条件分岐や例外処理の詳細までは表現しきれないため、開発者への詳細な仕様伝達には別途ドキュメントが必要になるケースも。使いどころを意識することはとても重要です。
業務やシステムの全体把握に最適ですが、個々の動きや設計の細部説明には不向きな面もあります。データフロー図はあくまで「鳥瞰図」として活用し、詳細設計ではシーケンス図や状態遷移図などと組み合わせるのが効果的。用途に合わせて使い分けることがポイントです。
例えばECサイトの注文フローを可視化する場合、データフロー図で「注文→決済→在庫管理」という大枠を把握した後、決済処理のタイミングやエラーケースについては別の図で補足すると理解が深まります。
データフロー図の最大の強みは、非技術者を含む関係者間で認識合わせがしやすい点です。複雑なシステムでもデータの入出力と処理の関係をシンプルに表現できるため、要件定義の初期段階での活用事例が多く見られます。
ただし、動的な処理やリアルタイム性の高いシステムには適さない場合も。たとえばチャットシステムのような双方向通信が中心のケースでは、データの流れが単純ではないため、UML図などの方が適しているでしょう。

良いところも悪いところも、割り切って使いこなすのが大事ですね。
データフロー図の基本記号と構成要素をマスターしよう
データフロー図には4種類の記号(外部エンティティ、データストア、プロセス、データフロー)があります。それぞれの記号はシステムの動きを視覚的に表現するための重要な要素で、外部エンティティはシステムの境界を示し、データストアは情報の保管場所を表します。これらの使い分けを覚えると理解がグッと深まります。
実際の現場では、外部エンティティは顧客や取引先といった人や他システムを指し、プロセスは注文処理や在庫管理といった具体的な業務や処理にあたります。例えば、ECサイトのシステム設計では、顧客が外部エンティティ、注文受付がプロセスとして表現されます。こうした具体的な対応を意識しましょう。
記号ごとに具体例を作ると混乱しにくくなります。たとえば、データストアを「商品データベース」、データフローを「注文情報の送信」と具体的に命名することで、各要素の役割が明確になります。プロセス記号とデータフロー記号の関係性を理解すれば、ルールを自然な形で身につけていきましょう。

記号は多そうで実はシンプルなので、気負わずに進めましょう。
作図前に準備する3つのポイント
本格的にデータフロー図を描き始める前に、目的や範囲、登場するデータや関係者を整理しておくべきです。特にシステム開発や業務改善の現場では、関係者間で認識を合わせることが重要で、プロジェクトの方向性が明確になります。準備を丁寧にしておくと後がスムーズになります。
業務フローや情報の流れ図をもとに、資料を用意する人も多いです。例えば、既存の業務マニュアルやシステム仕様書を参照しながら、データの入出力ポイントを洗い出すと効率的です。手順ごとの抜けもれチェックがしやすくなります。
まずは作図の目的を明確にしましょう。新システムの設計なのか、既存プロセスの分析なのかによって、必要なデータ要素や関係者の範囲が変わります。具体的なゴールを設定することで、無駄な作業を減らせます。
次に扱うデータの種類と流れを整理します。顧客情報や注文データといった主要なデータ項目をリストアップし、どの段階でどの処理が行われるかを把握しておくと、データフロー図の精度が向上します。
最後に関係者全員の役割を確認します。システム利用者や管理者など、各ステークホルダーがどのタイミングで関わるかを明確にすることで、作図後の承認プロセスが円滑に進みます。
これらの準備作業を入念に行うことで、データフロー図作成時の手戻りを防ぎ、プロジェクト全体の効率化につながります。特に大規模なシステム開発では、初期段階での準備が成否を分けることも少なくありません。

準備を疎かにすると、描き直しやすれ違いが増えるのは“DFDあるある”かもしれません。
データフロー図を描くための具体的ステップ
まずはシステムや業務全体像を「コンテキスト図」として描き、外部エンティティと主要なデータフローを把握しましょう。例えばECサイトのシステムであれば、顧客や決済業者などの外部要素と、注文データや決済情報といった流れを洗い出します。この段階では詳細より全体の関係性を捉えることが重要です。
具体的にはホワイトボードやツールを使って、システムの境界線を引き、外部とやり取りするデータ項目を矢印で結んでいきます。データフロー図の作成ツールを使うと、後からの修正が楽になるのでおすすめです。
次に大まかなプロセスを分割し、それぞれのデータストアやフローを書き出します。必要に応じて詳細なサブプロセスも追加していきます。例えば注文処理システムなら、「注文受付」「在庫確認」「出荷手配」といった主要プロセスに分解し、各工程間で受け渡されるデータを明確にします。
この時、データベースやファイルといったデータストアの位置付けも忘れずに記載しましょう。プロセス間で共有されるデータは特に注意深くマッピングする必要があります。
この分割を「レベル分割」と呼び、重要な要素が漏れないよう展開することが大切です。レベル1、レベル2…と細分化します。最初のレベル1では5-7つの主要プロセスに留め、各プロセスをさらにレベル2で詳細化していくのが効果的です。
例えば「顧客管理」プロセスをレベル2で展開する場合、「新規登録処理」「情報更新」「退会処理」などに分け、それぞれのデータ入出力を定義します。段階的に詳細化することで、全体の整合性を保ちながら精密な図が作成できます。

最初はざっくりでもOK。徐々に詳細にするのがコツです。
データフロー図作成の実例とサンプル図解説
業務でよく使われる例として、ECサイトの注文管理システムを題材にデータフロー図(DFD)を解説します。顧客が商品を注文してから配送完了までの流れを、外部エンティティ・プロセス・データストア・データフローの4要素で可視化すると、複雑な業務プロセスも一目で把握できるようになります。実際の図を見ながら、どのようにデータが流れているかを確認していきましょう。
例えば「注文受付」プロセスでは、顧客からの注文データが「注文情報」としてデータストアに保存され、同時に「在庫管理」プロセスへと流れていきます。このようにDFDを作成すると、各プロセス間のデータの受け渡しや依存関係が明確になり、システム設計の効率化に役立ちます。
もう一つの具体例として、顧客情報管理システムのDFDサンプルを見てみましょう。営業担当者が顧客データを登録すると、「顧客マスタ」データストアに情報が蓄積され、さらに「分析レポート作成」プロセスで活用される流れが分かりやすく図示されています。
サンプル図には「顧客」「営業担当者」「管理部門」などの具体的な登場人物と、「顧客基本情報」「購買履歴」などのデータが明記されているので、初めてDFDを作成する人でもイメージしやすい構成になっています。実際に手元の業務に当てはめて考えてみると良いでしょう。
これらのサンプル図を参考にすれば、自社の業務フローをDFDで表現する際のコツが掴めてきます。重要なのは、まず主要なプロセスとデータの流れを大まかに捉え、その後で詳細を追加していくことです。
最初はシンプルな図から始めて、必要に応じてレベルを上げていくのがおすすめです。実際の業務フローを可視化することで、無駄なプロセスやデータの滞留ポイントも発見できるようになります。

実際のイメージがつかめると、一気に理解が進みますよね。
よくある誤解・間違いとDFDの事例集
DFDを作成する際、初心者が陥りやすい失敗として「プロセスの数が多すぎる」「矢印が複雑に交差する」といった問題が挙げられます。例えば、受注処理のフローを描く際に、確認作業や承認ステップを細かく分けすぎると、かえって全体像が見えにくくなってしまいます。正しい例と悪い例を比較しながら、適切な粒度でプロセスを分割するコツを押さえましょう。
また、データフロー図では外部実体とデータストアの区別が曖昧になりがちです。顧客情報を扱う場合、顧客が外部実体で、顧客データベースがデータストアというように、役割を明確に区別することが重要です。正しい記号の使い方をマスターすると、DFDの可読性が格段に向上します。
ありがちな誤解を避けるには、DFDの基本記号とルールをしっかり理解することが近道です。たとえば、プロセスには必ず入力と出力が必要で、データストアから直接別のデータストアに矢印を伸ばすのはルール違反です。これらの基本を守るだけで、論理的な矛盾のないDFDを作成できます。
身近な業務を題材に練習してみると、理論と実践のギャップがよくわかります。社内の稟議システムや勤怠管理など、実際に自分が関わっている業務をDFDで表現してみると、データの流れを可視化する面白さが実感できるでしょう。
DFD作成で特に注意したいのが、データフローの過不足です。必要なデータフローが抜けていたり、逆に不要なフローが多すぎたりすると、システムの本質的な動きが見えなくなります。例えばECサイトの購入フローでは、注文データと在庫確認のフローが必須ですが、広告表示のフローまで含める必要はありません。
良いDFDは、見た人がシステムの仕組みを直感的に理解できるものです。複雑な業務プロセスも、適切な抽象化と階層化によって、シンプルでわかりやすい図にまとめることが可能です。最初は失敗しても、何度か描き直すうちにコツがつかめてきます。

誰でも最初はつまづきます。でもそれが上達の一歩、なので安心してください。
データフロー図を活用できるおすすめツール紹介
手書きだけでなく、いまは多彩なDFD作図ツール(無料や有料)も充実しています。特にシステム設計や業務フローの可視化が必要な場面では、専用ツールを使うことで効率的に作業を進められます。代表的なツールをいくつかご紹介します。
具体的にはVisio、draw.io、Lucidchartなどが初心者にも人気です。VisioはMicrosoft製で豊富なテンプレートがあり、企業での利用実績が豊富です。draw.ioは無料で使えるオープンソースツールで、Googleドライブとの連携が便利です。Lucidchartはクラウド型で共同編集に強く、リアルタイムでの作業共有が可能です。それぞれの特徴や使い方を簡単に解説していきます。
Visioを使う場合、まずは基本図形ライブラリからデータフロー図用の記号を選びます。プロセスを四角で囲み、データフローを矢印で結ぶのが基本です。draw.ioでは、左メニューの「その他」からDFD用の図形を追加できます。LucidchartはテンプレートギャラリーにDFD用のひな形があるので、それをベースにカスタマイズすると効率的です。

いろんなツールがあって迷うけど、自分が使いやすいものを選ぶのが大切ですよ。
DFDと他の図(ER図、UML、業務フロー図)との違い
DFDはデータの流れに特化していますが、ER図やUML、業務フロー図など似ている図との違いも押さえたいところです。DFDがデータの入出力と処理に焦点を当てるのに対し、ER図はデータベース設計のための実体と関係を可視化します。例えば、顧客管理システムでは、DFDで「注文データがどのように処理されるか」を示し、ER図で「顧客と商品の関連性」を表現するといった使い分けが可能です。用途ごとの得意・不得意を理解して使い分けましょう。
UML図はオブジェクト指向のシステム設計に適しており、クラス図やシーケンス図など多様な表現が含まれます。一方、業務フロー図は人の作業手順や部門間の連携に重点を置くため、データ中心のDFDとは目的が異なります。例えば、受発注プロセスを分析する場合、業務フロー図で「誰がどの作業を行うか」を明確にし、DFDで「関連データがどう移動するか」を補足するといった併用が効果的です。
実際のプロジェクトでは、状況に合わせて複数の図を併用することも珍しくありません。システム開発の初期段階ではDFDで全体のデータフローを把握し、詳細設計ではUMLで具体的な振る舞いを定義するといった使い方が典型的です。特に複雑なシステムでは、ER図でデータ構造を整理しながら、並行して業務フロー図でユーザー操作の流れを確認するといった方法が有効です。必要に応じて最適な図を選択することが大切です。
これらの図は互いに補完し合う関係にあります。在庫管理システムの例では、DFDで「在庫データの更新フロー」を、ER図で「商品と倉庫のリレーション」を、業務フロー図で「発注担当者の承認プロセス」をそれぞれ表現できます。共通のシステム要素を異なる視点で可視化することで、より包括的な分析が可能になるのです。

“なんで似た図が多いんだろう…”と思った人、多いですよね。
データフロー図を現場で活用するコツと注意点
現場でDFD(データフロー図)を活用する際は、共有しやすさや保守性を第一に考えることが重要です。特にチームメンバー間での役割分担が明確になるよう、各プロセスの担当者を明記したり、更新履歴を残したりする工夫が必要になります。最終的な成果物として完璧を目指すより、議論や説明のためのツールと割り切って使う方が、現場ではスムーズに進むケースが多いです。
例えば、新しいメンバーがプロジェクトに参加した際には、DFDを見ながらシステムの全体像を説明すると理解が早まります。その際、図だけでは伝わりにくい部分は口頭で補足したり、別途詳細な仕様書を参照させたりする柔軟性が求められます。
DFDを説明資料として使う場合、単体で提示するより補足図表を組み合わせるのが効果的です。フローチャートやER図、ユースケース図などを併用することで、データの流れと業務プロセスの関係性が視覚的に理解しやすくなります。
たとえば顧客向けの説明会では、DFDに加えて画面遷移図を並べて表示すると、システムの操作性までイメージしやすくなります。このように状況に応じて表現方法をアレンジするのが、現場での賢い使い方と言えるでしょう。
DFDの作成ツール選びも現場での使いやすさに直結します。クラウド型のツールであればリアルタイムで共同編集が可能ですし、バージョン管理機能が充実しているものなら変更履歴の追跡も楽になります。
重要なのは、完璧な図面を作ることより、チームのコミュニケーションを促進することにDFDの意義があると割り切ることです。多少の不備があっても、プロジェクトが前に進むのであればそれは良いDFDと言えるのです。

DFDはコミュニケーションの道具、と割り切るのが現場流。気楽にいきましょう。
まとめと次のステップ~誰でもできるDFD作成の実践法
ここまでの内容を踏まえて、実際に自分の業務や身近なシステムでデータフロー図を描いてみましょう。例えば、社内の簡単な申請フローや個人で使っている家計簿アプリのデータの流れを可視化するのがおすすめです。小さな範囲から試すことで自然にステップアップできます。
迷ったら、基本に立ち返って整理し直す習慣を身につけると良いです。データフロー図作成で重要なのは、外部実体・プロセス・データストア・データフローの4要素を明確にすること。例えば「ECサイトの注文処理」を題材に、各要素を丁寧に洗い出す練習を繰り返すことで、何度も描くことで自信がつきます。
必要に応じてツールや外部の資料、練習問題も活用し、理解を深めていきましょう。無料で使えるLucidchartなどのクラウドツールや、IPAの基本情報技術者試験過去問題にあるDFD問題が効果的です。特にデータの入出力に着目して描くことで、自分の理解度を深めていきましょう。

失敗も練習も大歓迎。まずは一歩を踏み出しましょう!



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